コラム著者:山田啓文
2025年7月から始まったテレビドラマ『19番目のカルテ』で登場する 総合診療科 について、皆さんはご存じでしょうか。「総合内科」「家庭医」など、似たような言葉が多く登場するため、違いが分かりにくいと感じる方も多いかもしれません。今回は、私が理解している範囲で整理してみたいと思います。
10年ほど前まで日本では、学会ごとに専門医を独自に認定しており、各学会の規定を満たした医師を「〇〇専門医」と呼んでいました。ところが、100を超える学会が存在し、認定基準もバラバラであったため、資格が診療の質にどこまでつながるのかが分かりにくい状況でした。こうした課題を受け、2014年に第三者的な認定機関として 日本専門医機構 が設立されました。そして多くの議論・調整を経て、2018年に新専門医制度がスタート。臨床研修を修了した医師がいずれかの「基本領域」を選び、その後「サブスペシャルティ領域」を選んで研修する仕組みが導入されました。総合診療科は、当初18領域で構想されていた基本領域に加わった19番目の診療科です。
2025年現在、サブスペシャルティ領域の制度はまだ完全には整備されておらず、学会が独自に認定する専門医と、日本専門医機構が承認しているサブスペシャルティ専門医が混在しています。
「家庭医」とは、日本プライマリ・ケア連合学会が認定する専門医で、家庭医療学 という学問に基づき、患者やその家族に継続的・包括的な医療を提供することを目指しています。総合診療科の研修制度がつくられる際には、この家庭医研修制度が参考にされ、現在でも総合診療科の指導医には家庭医専門医が多く含まれます。ドラマ『19番目のカルテ』に登場する診療アプローチも、実は家庭医療学をベースにしている部分が多いのです。
一方、「総合内科」とは日本内科学会が認定している専門医で、内科全般を基盤としながらも、多くは臓器別の専門医資格を持つ医師によって占められています。資格取得には疾患(Disease)に関する学習や症例報告が求められるため、主に「疾患(Disease)」に焦点を当てた専門医といえます。
以上、簡単ではありますが、私の関わってきた診療科・専門医についてご紹介しました。少しでもイメージをつかむ手助けになれば幸いです。
最後に――資格はあくまで資格であり、大切なのは日々の研鑽と患者さんに向き合う姿勢だと考えています。
一つひとつの出会いを大切にし、「出会えてよかった」とお互いに思えるような関わりを築けることを願っています。
参考文献:
日本専門医機構.日本専門医制度概報【令和6年(2024年)度版】.一般社団法人日本専門医機構;2025年3月.[閲覧日:2025年8月27日].
https://jmsb.or.jp/wp-content/uploads/2025/04/gaiho_2024.pdf