インフルエンザQ&A
コラム著者:猫本秀貴

2024年から2025年にかけての冬は、過去10年で一番のインフルエンザの流行とされています。そこで、少しでも正確な情報を皆様にお届けすべく、外来でよくお寄せ頂く質問をまとめました。
インフルエンザと診断された方、インフルエンザかも?と思った方、その周りの方、その他すべての方へ。少しでも参考になれば幸いです。
症状の経過は?
- 計3日程度、熱が続くことが多いです。
- 解熱後もせき、たん、鼻水などが残ることがありますが、次第に改善してきます。
- 水分をしっかり飲んで、ゆっくり休養して下さい。食欲がない場合は、塩分・糖分を含んだ水分をとるといいでしょう。OS-1などの経口補水液が理想ですが、水や麦茶とスポーツドリンクを半分ずつ飲んでもいいです。
- 息苦しい、5日以上熱が続く、水分がとれない場合(ほか子供では、1時間以上、異常行動・言動が続いている場合)は、受診してください。
検査の方法は?検査はしたほうがいい?
- 当院を含め多くの医療機関で、鼻に綿棒を入れて検査をする、迅速抗原検査を行っています(当院では5~15分程度で結果が判明します、新型コロナウイルス感染症の抗原検査を同時に行うことも可能です)。
- 他の検査もですが、インフルエンザの検査に100%はありません。
- 発熱してから早いほど、偽陰性(インフルエンザだがインフルエンザでないと判定されること)が多いです。(一方、偽陽性(インフルエンザではないがインフルエンザと判定される)はかなり少ないとされています)
- 12~24時間経つと一番偽陰性が少ないですが、それでも4人に1人は偽陰性が出るとされています。[1]
- つまり、家族が感染している、流行期にある、症状や診察からして疑わしい、場合などでは、検査をしないでインフルエンザと診断した方が正確なことが少なくありません(その場合でも、当院ではインフルエンザとしての治療は可能です)。
いつから園・学校・職場に行っていい?
- 園や学校では、学校保健安全法により登園・登校してはいけない期間が定められています。
- 未就学児: 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後3日を経過するまで
- 学校 : 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで
- 職場は、法律での決まりはありませんが、学校の出席停止期間を参考にする場合があります(この期間は人にうつしやすいと考えられることが多いためです)。職場とご相談ください。
- 登園・登校許可証は、不要なことが多いですが園・学校に確認ください。解熱した日を確認する必要があるため、必要な場合は症状が改善してから記載します。
いつまで人にうつる?
- 大まかに言えば、出席停止期間は人にうつしやすい期間とお考え下さい。
- 少なくとも、解熱し症状も改善してから24時間は、公共の場に出ないことが推奨されます。[2]
インフルエンザ治療薬の効果は?
- 前置きとして、インフルエンザにかかった人全員が治療薬を使う必要があるとは考えません。治療薬を使わずともインフルエンザは治ることがほとんどです。
- タミフルの場合、解熱までの期間を2割程度短くするとされています(あと2日で解熱する見込みなら、10時間程度解熱が早くなるイメージです)[3]。
- 発熱などの今あるつらい症状を、すぐに取ってくれるわけではありません。当院では、抗インフルエンザ薬を使っても使わなくても、対症療法薬を併せて処方しています。
- 発症48時間以上経過すると効果は乏しいです。
各治療薬について、大まかな違い
タミフル
古くからあるためデータも集まっています。乳幼児から高齢者、妊婦まで広く使えます。たまに吐き気が出る人がいます。
リレンザ
吸入薬です。気管支喘息やCOPD、牛乳アレルギーがある方は使えません。
イナビル、ゾフルーザ
どちらも1回の服用で済むので一見便利ですが、有効性や耐性化(薬が効きにくくなること)の懸念から、当院ではあまり使用していません。
インフルエンザにかかったら使ってはいけない薬?
- 子供において、一部の薬が、ライ症候群という合併症のリスクを増やすとされています。
- 子供では、解熱鎮痛薬(熱さまし・痛み止めを兼ねた薬)としてはアセトアミノフェン(商品名:カロナール、タイレノールなど)が無難でしょう。
- 川崎病などで普段からアスピリンを飲んでいるお子様は要注意です。
- 大人では、ロキソニン、アスピリン含めて使用可能です(妊娠・授乳中の方は医師とご相談ください)。
予防接種を打っていたのに。。
- 予防接種の一番の目的は、「重症化」予防です(乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方を中心に、肺炎や脳炎などで毎年1000人単位が亡くなる病気です)。
- インフルエンザにかかったあなたが1週間後に元気に回復したのであれば、「ワクチンの効果がなかった」と考えるのは早計だと私たちは考えます。
- かかることの予防効果は、(年によっても違いますが)大まかには2~6割くらいとされています。
- インフルエンザワクチンについての情報は、こちらのサイトで詳しくまとめられています。
おとなとこどものワクチンサイト(日本プライマリ・ケア連合学会 監修)
お読みいただきありがとうございます。その他にも気になることがあれば、外来でも遠慮なくお尋ね下さい。インフルエンザは症状がつらいことも多いですが、乗り切るために私たちが少しでも力になれば幸いです。お大事にされて下さい。
参考文献:
[1]感染症誌 95:9~16,2021
[2]UpToDate
[3]Lancet. 2015;385(9979):1729.
[4]厚生労働省ホームページ>令和6年度インフルエンザQ&A