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Sence of Safety:『安全基地』としての家庭医の役割

コラム著者:志水健太

Sence of Safetyとは

Sence of Safety

Sence of Safetyは、私たちが自分自身や他人との関係を感じる際の安全感や信頼感を示す概念で、自分自身をどのように感じるか、他人とどのように関わるか、そして自分自身や他人との関係をどのように理解するかに影響を与えます。
この概念は、トラウマの治療の文脈で生まれました。トラウマを経験した人々は、しばしば自分自身や他人、そして周囲の環境に対する安全感を失います。そのため、トラウマの治療では、このSence of Safetyを回復し、再構築することが重要とされています。

『安全基地』としての家庭医の役割

具体的にSence of Safetyとは何かを考えてみましょう。
例えば、あなたが友人とカフェでコーヒーを飲みながら会話をしています。その友人があなたの話を優しく聞いてくれて、理解しようとしていると感じたとき、あなたはSence of Safetyを経験しています。この安全感は、友人があなたの話を尊重し、あなたの感情や経験を理解しようとする姿勢から生まれます。一方、もし友人があなたの話を中断したり、あなたの感情や経験を無視したりすると、Sence of Safetyは失われます。こうした状況では、あなた自身の感情や経験が適切に尊重されていないと感じるでしょう。

このSence of Safetyは、私たちの日常生活だけでなく、医療の現場においても非常に重要な役割を果たします。特に家庭医療では、患者全人を対象とした医療が提供されます。これは、患者さん一人ひとりの生活状況、感情、体調、病歴などを全て考慮に入れて診療を行うという意味です。そのため、患者さんが自分自身を安全に感じ、医師や看護師とのコミュニケーションがスムーズに行えるSence of Safetyの確立は、それ自体が『安全基地』となり、患者さんが適切な医療を受け、自分自身の健康状態を改善する上で重要となります。

例えば、家庭医療において、患者さんが自分の体調や感情を正直に話すことができるのは、Sence of Safetyがあるからこそです。この安全基地があるからこそ、患者さんは医師に対して信頼感を持ち、自分の病状や感じている痛みを素直に伝えられるのです。そして医師は、その情報を基に最適な治療法を提案することができます。これは患者さんが自分自身の健康を守るため、また家庭医療が患者さん一人ひとりに合わせた適切なケアを提供するために、非常に重要な要素となります。

また、Sence of Safetyは、患者さんが自身の治療に積極的に参加するためにも重要です。医師との信頼関係が築かれ、安全感が確保されている場合、患者さんは自分の健康管理に積極的に関与することができます。これは、自分の体調を良くするためのライフスタイルの改善や、病状に対する理解を深めるための情報収集など、患者さん自身ができることを行うための重要なステップです。

家庭医療の現場におけるSence of Safetyの重要性

このように、Sence of Safetyは私たちの生活のあらゆる側面、そして家庭医療の現場で重要な役割を果たします。何か困った事が起きた時は、このSence of Safetyを感じられるような環境が整っていることを確認し、自分自身の健康を守るためにこの感覚を大切すると良いかもしれません。

もしSence of Safetyを感じられない環境におられる場合は、ご相談にいらっしゃってください。我々が診療を通じて、安全基地として機能してSence of Safetyを見つける旅を伴奏いたします。

参考文献:
1)Lynch, Johanna (2019). *Sense of safety: a whole person approach to distress in primary care.* PhD Thesis, Faculty of Medicine, The University of Queensland.

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