コラム著者:松本 祐昂
今回は新型コロナウイルスで皆さんが頻繁に測定するようになった体温(発熱)についてお話させていただきます。
日本人(成人)の体温は36.67℃±0.36℃程度1)といわれており測定する場所でその温度は異なります。額やワキの下で測定することが現在の主流ですが体の表面から中心に近付くほど体温は高めに測定されその差は約1℃あるといわれています。
頭の視床下部(ししょうかぶ)という場所で体温の上げ下げを調整しており筋肉で熱を産生しています。寒いときにガタガタと体を震わせる現象はみなさん経験したことがあると思いますがあれは熱を起こしている状態なのです。体温は一日の中でも上下しており朝は寝ている状態で筋肉を使わないので体温は低く、日中体を動かすにつれて体温は上昇し一日の中で1℃近くの差が生じます。
発熱とは日本の感染症法という法律で37.5℃以上であると規定されています。つまり、正確には37.3℃などの体温は発熱ではないのです。
では、熱が出る原因はというと様々なものがあります。ウイルスや細菌による感染症、いわゆるガンによる腫瘍熱、関節リウマチといった膠原病などが発熱の3大原因ともいわれます。また、これからの季節で忘れてはならないのが熱中症です。正確には熱中症による熱は発熱ではなく、高体温という状態で視床下部が関与していないため解熱薬は効果がありません。
しばしば患者さんとのやり取りで「熱があるので解熱薬をください」というものがあります。例えば、感染症による発熱は体温を上げることで免疫系を活性化させ病気と闘います。そこに解熱薬を投与してしまうと病気と闘う力が半減し、逆に病気が長引くことになるかもしれません。その辺りの判断は我々医師に相談していただければと思います。
体温調節は単純に見えて実は複雑です。日頃の疑問などいつでもご相談ください。
参考文献 1)田坂定考 日新医学 44:633,1957