コラム著者:湊 真弥
日本内科学会認定医
“もしもの時”、つまり亡くなる直前になると、約70%の人は自分の治療に関する意思を決められなくなってしまうといわれています(1)。
そんな“もしもの時”のために、ケアの目標や、具体的な治療・療養について他の人と話し合っておくことを、アドバンスケアプランニングもしくは「人生会議」という愛称で呼んでいます。
“もしもの時”は、いつ誰に訪れるのか誰にもわかりません。自分の思いを言葉にできなくなってしまったとき、自分の家族や友人は、どれだけ自分の気持ちを汲んでくれるでしょうか?紙に書いて書き残しておいても、自分の気持ちはその時とは大きく変わっているかもしれませんし、他の人がいきなりその紙を見ても、「本当にこんなこと考えていたのかな・・・」と心配になるかもしれません。しかも、そんな“もしもの時”には大抵、とても大きなことに関して、急いで・ストレスがかかる状況の中で、決断をしなければいけません(2)。でも一緒に話し合っておけば、“もしもの時”に、自分の気持ちを反映できる可能性が高まることが示されています(3)。
「自分にはまだ関係ない」と思う方も多いかもしれません。「そんなこと今は決められない」と思う方も多いかもしれません。でも、実際にその時が来たときに、自分の思いを口にすることができなかったら…。そんなときに、「この人だったらきっとこう考えるだろう」と思いを巡らせてくれる家族や友人は非常に貴重な存在です。勇気を持って、話し合ってみてください。そして、そこに私たち医療者も混ぜていただくことができるなら、具体的な処置や対応のことを少しお話しできるかもしれません。もしよければ診察の時に気軽にお声掛けください。
<引用文献>
1.Silveira MJ, Kim SY, Langa KM. Advance directives and outcomes of surrogate decision making before death. N Engl J Med 2010; 362:1211.
2.Uy, Jamie, et al. "Physicians’ Decision Making Roles for an Acutely Unstable Critically and Terminally Ill Patient." Critical care medicine 41.6 (2013): 1511.
3.Teno JM, et al. J Am Geriatr Soc 2007; 55:189.
<参考文献>
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02615.html
厚生労働省ホームページ